抱きしめてほしかった腕が誰のものだったかが
段々とわかるようになった。
それはとても幸福で苦しいこと。
なぜなら彼には新しい人が傍に居るから。

「いまでも好きだよ。
 俺は俺で立身出世欲があるけどその先に保証はない。
 アサトちゃんには幸せになってほしい」
と彼はそう言って泣いた。

私の事は本当に大切だ、と彼は泣きながら言う。
でも一番大事な人とは結婚できないんだろうねと言った。
私は腹が立った。
馬鹿か、ふざけるな、本当に大事ならば
名誉も権利も奪い取るだけの覚悟で
取り戻しにくればいい、そんなの愛じゃないだろう

私はそう言って彼を罵った。

一体何が大切なのかわからない

私は今日久しぶりに泣いた。
昼間に飲んだデパスは効いているのだろうか、
全くわからなかったけれど
取り戻したい腕を思い出し

どうしてお互いが大事にしているのに戻れないのかを
その経過してしまった時間と作り上げた傷とを思って



静かに泣いた。



世界は夕闇に暮れる。何度も何度も。

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