ブラインド

なにがたいせつなのかだれかおしえてほしいとおもった


ずっとお日様のもとで笑っていられたらいいのに
本当は、ずっとずっとずっと前からそう願っていて
でもやっぱり何がこわいのかさえわからない恐怖がやってくる

静まり返った夜中に、
風呂場の古い水道の蛇口は、
ぴちゃ、ぴちゃ、と一定のリズムで水滴を滴らせる。
時折、つけっぱなしにしたパソコンからは
しゅうしゅうとファンのまわる音が混じる

私は立ち上がって紅茶を飲む為にミルクパンにお湯をわかす
IHのスイッチが入るピッという音
その後の。
隙間と隙間を埋める恐ろしいほどの無機的な静寂

静寂

そのとき、思った
なにがたいせつなのかだれかおしえてほしいとおもった

昔、星の王子様で読んだ
羊の絵を書いてくれる
不時着したパイロットが本当にいればいいのにと思った

本当に大切なものは目には見えないもので
それはわかっていて
私がとてもこわいものは時間だ
今と今との点をつないでいく、そのもの
過去、今、その先
見えないもの
だからもし今、不時着したパイロットがいてくれたなら
その「今」、今という瞬間を凍結して
それがずっと永続的に続けばいいのにと願う

叶わないことだけれど


世界が大きく歪んでしまってみえる









ごめんね

わすれたくなんかないんだ