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2006年1月21日
その時、僕は整然と並んでいる並木道を眺めながら漠然と思った。
それは、僕はあの人を忘れるんだろう、という予感めいた確信だった。
あくまでそれは予想でしかない、けれどきっとそうなっていくのだ、
と言う確信だった。

彼女を待っていたが、閉館になり追い出された図書館からの帰り道、
そんな事を漠然と思った。
なぜその時、その瞬間に、そんな考えが思い浮かんだのかはわからない。
彼女を待っていたそして会えなかったという事が僕を
センチメンタルな気分へ持っていっていたのかもしれないし、
ただ単にそういう気分であったのかもしれない。

でも確かにその夕方の暮れ時の、
芸術的と言って良いほど機械的に狂いなく植立された
木々の並木道を漠然と眺めるうちそのような想いが
重く、脳裏のどこかに浸透してきたのだった。

そしてその事に気付いた時、僕は涙を流していた。
以前のような激情に駆られてと言うものではなく
ただ、静かに目からじわり、じわりと溢れる程度だったがその想いは
僕の思考を麻痺させ、胸を冷やし、目から何か熱いものを流させていた。
思考とはどこか遠く離れた部分で何かが僕に涙を流させているのだった。

図書館ではぎりぎりまで彼女を待っていて、一番最後に遅れて出た為にそれを人に見られる事はなかった。だから僕は人目を気にせずに涙を流した。

ただ、忘れたいわけではないのだ、と言う切実な想い、
けれど僕はあの人を忘れるだろうと言う予感と確信、
その感情が内交ぜになりどうしようもなかった。
思考が混乱し、ただ僕は声を出さずに泣いた。

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